外国人技能実習生に関係する法令①2020.08.17

今回のテーマは“外国人技能実習生に関係する法令について”です。外国人技能実習生は様々な関係法令で守られています。その中でも、今回は労働関係法令に着目し、解説いたします。

 

外国人技能実習生は実習実施者との間で雇用関係が認められ、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法などの労働関係法令が適用されます。これら関係法令を遵守し、適正な労務管理を行っていただくことが必要となりますので、留意すべきものを以下に挙げていきます。

 

1.労働条件の明示(労働基準法第15条)

実習実施者は、外国人技能実習生が実習を開始する前に、労働条件を明確にしなければなりません。トラブルの未然防止や労働条件を明確にするため、賃金・労働時間・その他労働条件に関する事項を明示し、母国語も併記された書面(雇用契約書及び雇用条件書 参考様式第1-14号及び1-15号)で交付する必要があります。

雇用契約書及び雇用条件書に関しては、外国人技能実習機構への認定申請の際に、提出が必要な書類となり、実習開始後、変更が出てくれば変更届が必要となる大切な書類となります。

 

2.強制貯金(労働基準法第18条)

労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、または貯蓄金を管理する契約をしてはいけません。書面による協定書がなく、外国人技能実習生のためと思い、給与から天引きをし、勝手に貯蓄をすることはできません。もちろん、銀行口座の通帳やキャッシュカードを実習実施者が管理することも禁止されています。

 

3.賃金の支払い(労働基準法第24条)

実習実施者は、外国人技能実習生の賃金について、本人に通貨で、直接、その全額を毎月1回以上、一定期日に、支払わなければなりません。ただし、直接支払いの例外として、①本人と文書による合意②本人の指定する金融機関の本人名義の口座に振り込むこと③賃金計算書の交付④労使協定の締結など、一定の要件を満たしていれば、金融機関への口座振り込みなどにより賃金を支払うことができます。

また、賃金から法定控除(税金、社会保険など)以外のものを控除する場合には、賃金の一部控除に関する労使協定の締結が必要です。

 

よく問題となる事例は、賃金控除に関する労使協定を締結しないで、賃金から居住費や水道光熱費、食費などを控除しているときです。この第24条に関しては、外国人技能実習機構の立ち入り調査の際も、重点的に確認される項目なので、適正な賃金の支払いが大切となってきます。

 

4.最低賃金の効力(最低賃金法第4条)

実習実施者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金以上の賃金を支払わなければならないので、日本人労働者同様、賃金が最低賃金を下回っていることのないようにしっかりと管理をしましょう。なお、特定最低賃金が適用される業種に従事する際は、そちらが適用されるのでご注意ください。

 

5.年次有給休暇(労働基準法第39条)

以前のテーマでも挙げたように、外国人技能実習生は、労働基準法上は労働者なので、年次有給休暇を付与しなければなりません。外国人技能実習生として実習を開始した日から起算して、6ヶ月継続勤務をし、全労働日の8割以上出勤しておれば10日付与、それから1年後に同様8割以上の出勤があれば、11日の年次有給休暇を付与しなければなりません。

 

外国人技能実習生の受入れにあたり、適正な労務管理のもと、適切に賃金を支払い、技能修得に支障をきたさないようにする必要があります。

 

外国人技能実習生にも、入国後講習中に関係法令で守られていることを勉強させていますが、すべてを把握できていないかもしれませんので、日頃の会話の中で、不安に思っていることがあれば、教えていただければと考えております。